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リフレーミング(解釈の枠組みの改変)の闘い:ナラティブ(ストーリー)の主導権をとろうとする反中絶派の言語操作

リフレーミングーものや言葉の解釈の枠組みを変えることーは、極めて強力なツールのひとつです。反中絶派はこれまで、「生命」や「選択」といった言葉を、自らの主張にすり替えて独断的に利用してきました。私たちはそれらの本来の意味を全力で取り戻さなければなりません。

リプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)のための闘いは、法廷、議会や診療所だけで起きているわけではありません。普段の会話やSNS上でも繰り広げられています。反人権団体は、「言葉」が人々の認識を形成することを理解した上で、何十年にもわたってリプロダクティブ・ライツのストーリーを戦略的に変えようとしてきました。

それは、計算された言葉の使い方に如実に現れています。宗教関連団体は、胎児を「生まれていない子(unborn)」と呼んでいましたが、いまは「生まれる前の子(pre-born)」と呼ぶことで、胎児を妊娠期の一過程ではなく、既に完成した「ひとりの人間」として捉えようとしています。「ハートビート(心拍)法」(*1)は、受胎後数週間で胎児の心臓が完全に機能するとの誤解を招く法案です。反中絶派は、「危機的妊娠支援センター(Crisis Pregnancy CentresCPCs)」と名付けた施設を設立し、妊娠した女性に誤った情報を与え、行動を誘導しようとしています。表向きは女性を救うとしていますが、妊娠の継続を望まない女性に、中絶以外の選択肢を勧めることが本当の目的です。これは単なる言語操作にとどまらず、世論を操作し、人びとの感情をかきたて、リプロダクティブ・ライツを蔑ろにしようとする意図的な戦略です。

ものや言葉の解釈の枠組みを変えることーリフレーミングーは、極めて強力な手段のひとつです。反中絶派はこれまで、「生命」や「選択」といった言葉を、自らの主張にすり替えて利用してきました。私たちはその本来の意味を全力で取り戻さなければなりません。

「生命」とは、妊娠の選択肢があり、将来について自己決定権を持つ、現実に生きている人間(女性)の命のことです。「子どもをもつか、もたないか、いつもつか」の選択ができることは、自分の人生をフルに自分で決めながら生きる上で非常に重要です。それは経済の安定、健康、安全、自律にかかわります。

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Abortion Care

さらに、安全でない中絶も見逃せません。世界保健機関(WHO)は、年間47,000人の女性が、安全でない中絶による合併症で死亡していると報告しています。47,000人が命を落とした原因は、必要なケアへのアクセスがないことです。これのどこが「プロ・ライフ」なのでしょう。

反中絶派は強制的な妊娠がもたらす結果を意図的に無視しています。調査によると、中絶ケアを拒否された女性は、貧困に陥りやすく、長期的な健康不良に悩み、DV(配偶者暴力)を受けやすくなることが証明されています。『Turnaway Study(*2)では、女性が中絶ケアを拒否された場合、受け入れられた場合と比べ、経済面および健康面での著しい悪化が見られたことが明らかになっています。これは、反中絶派が主張する「プロ・ライフ(生命の尊重)」どころか、強制された苦痛にほかなりません。

さらに、安全でない中絶の状況も見逃せません。世界保健機関(WHO)は、年間47,000人の女性が、安全でない中絶による合併症で死亡していると報告しています。47,000人が命を落とした原因は、必要なケアへのアクセスがないことです。これのどこが「プロ・ライフ」なのでしょう。

リプロダクティブ・ライツの闘いは、言葉を取り戻す闘いでもあります。胎児を「生まれる前の子」などと呼ぶことは、妊娠した女性の自己決定権を奪います。また、「生命」が、胎児だけに着目し、妊婦が無視されていることも問題です。さらに反中絶派のメッセージの裏にある欺瞞を暴き、リプロダクティブ・ジャスティス(性・生殖・再生産をめぐる社会正義)への断固としたコミットメントに変えていかなければなりません。

反中絶派が阻止しようと躍起になっている、世界中でのセクシュアル・リプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)やヘルスケアのアドボカシー活動は、成功してきました。

「言葉を取り戻す」とは、現実に焦点を戻すということです。本当の意味での生命の尊重とは、人々を信じて、抑圧やデマの影響を受けずに自己決定できる状況を創り出すことです。

これが、IPPFの呼びかけるアクションです。あらゆる局面で反中絶派による言葉の操作に立ち向かわなければなりません。今後も、真実を語り、人生を歩んできた人びとの現状に即し、自律や尊厳の権利を尊重する言葉を使っていかなくてはなりません。

 

[脚注]

*1  Heartbeat Law:妊娠6週以降に胎児に心拍が確認されたら中絶を制限する法律。

*2  The Turnaway Study:米カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究機関Advancing New Standards in Reproductive Health: ANSIRHが発表。

「言葉を取り戻す」とは、現実に焦点を戻すということです。本当の意味での生命の尊重とは、人々を信じて、抑圧やデマの影響を受けずに自己決定できる状況を創り出すことです。

1

Abortion saves lives

IPPF